30日に風邪を発症して4日目。熱はすみやかに下がった。ここのところの制作とライブのコンビネーションを華麗に避けてひくという、体がスケジュールを把握していたんじゃないかと疑うくらいのベストタイミングだ。今週は自宅で諸々の作業はちびちび進めつつも、休もうと決めた。  しかし咳がひどい。昼間の交感神経が優位な時間帯は生活に紛れてしまってそう気にならない。歌えないのは辛いが、まあ仕方がない。問題は夜だ。  眠れない。昨夜なんかはすんなり眠れそうな予感に胸を躍らせながら身をよこたえた途端コホ。で、そこから一回では収まらずワンショットが激化していく。ゴッホ!グエッホ!体が反動でよじれるのをどうにか食い止めようとして筋肉が硬直していく。もうこれは一度リセットしなくてはと思い、上体を起こしてストレッチし、白湯を作り飲む。ひとつ息を吐いて、いまいちど体をよこたえるコホ。ゴッホ!グエッホ!ゲホ!ゲホゲホ!まあ白湯を飲んだくらいで収まるとはこちらも思っていない。先ほどから様子をうかがっていると、どうやら呼吸によって息が荒れた上気道を通過するときの刺激がトリガーとなって咳を誘発しているようだ。なので、呼吸をなるだけ浅く行えばいい。小さく吸って小さく吐く。息の出入りを気管支が感知できないくらいに小さく。そうすると次第に息苦しくなってきた。よし、この後の戦いに備えるためにも、一度大量に息を吸って、肺にチャージしよう。できるかぎりゆっくりであれば気管支も気づかないだろうコホ。ゴッホ!グエッホ!ゲホ!ゲホゲホ!ンゲッホ!!ゴッホゴーギャンゲロッパ!!もうどうでもいいとなり、そのままうなされて半分起きてる半分寝てるような状態の頭でレコーディングにおいて取り返しがつかないくらい自分が激昂する夢をみたりしたが、気づけば僕はお手洗いに立っており、断続的な咳による微細な振動により後頭部に痺れを、全身に筋肉の硬直を感じながら今日を迎えた次第だ。  窓の外では認知症の方がしっかりとした口調で『なんでだ!!』と言っているが、それは僕の言葉を、もしくは世界の言葉を代弁しているのではないか?

 こんなに咳が出ていては映画にも行けやしない、、、でも治ったらすぐに行くんだ、とかねてより楽しみにしていたポール・トーマス・アンダーソン監督、トマス・ピンチョン原作の映画『インヒアレント・ヴァイス』を検索すると、見事に公開が終わっていた。ブラヴォー。

(20150604)