『流氷と工場』そして突発的リリース

 明日というか日をまたいで今日は遂に成山さんとのツーマンイベント『流氷と工場』の日です。代官山の晴れたら空に豆まいて、ありがたいことにソールドアウトしました。

 素晴らしいソロアルバムを完成させた成山さんと、これから作ろうとしている僕の二者の演奏をゆったりと聴いていただきたいと思っています。

 それから、突発的な思いつきなのですが、僕の音源をダウンロード形式でリリースします。  『Selected Abstract Works I』というこれは新作ではなく、今まで個人的に録り貯めた未発表音源で、そのなかになんとも形容しがたくも味わいのある種類のものがあり、そのなかから選りすぐった音源です。  まず強く断っておかなければならないのは、歌は一切入っておらず、曲と呼ぶことすらもはばかられるようなものがほとんどなので、普段の演奏やバンドの感じを期待すると確実に裏切られると思います。  実はこれまで発表の機会をうかがっていたのですが、ものによっては習作という気持ちで作っていたことや、作品としてあまりにフォーカスが甘い、というよりもフォーカスが「無い」ので、ずっとバソコンに眠らせてあったのですが、聴いてもらいたい気持ちはずっとあったので、ダウンロードで行くか!と思い立っての今日です。

 ◎販売方法

 ダウンロードではありますがライブ会場に限定します。ライブ会場でお買い上げ頂いた方にギガファイル便のアドレスを差し上げますので、当日を入れて7日間以内にダウンロードしていただく、という方法をとります。

 ◎価格

 価格は未設定でいきます。内容的に幾らで売ればいいか自分自身で見当がつかないというのもあります。つまり責任放棄です。10円でも1,000,000円でも構いません。

 ここでひとつ、お買い上げの際に念頭に置いておいて頂きたいことがあります。  売り上げは全額、今月14日に発生した熊本地震(九州中部地震)に義援金として寄付します。寄付先は赤十字かな〜と思っていますが、すぐに反映されないという話も聞くので支援団体に支援金の方がいいのかもとか、ちょっとまだ考え中です。

 九州はこれまでの演奏ツアーでも何度も足を運び、去年の47都道府県ツアーでも当然訪れています。こういった災害が起こる度に、これまでライブ会場に足を運んで熱心に聴き入ってくれているリスナーの皆さんの顔が浮かびます。今回ももちろんそうです。とても胸が痛みます。  僕は福岡県北九州の出身で、九州には知人友人が生活していますから、余震の状況も発生当時リアルタイムで聞いていました。なのでより身近に被害や不安が伝わってきます。何かせずにいられないのは僕だけではないと思います。

 できることは色々とあると思います。とりあえず今回は強い考えがあるわけでもなく、僕の個人的な日常の一部として、売上をそういう風に使おうと思っているだけなので、重く受け止める必要は全くありません。微力な被災地支援にもなるんだ、ラッキー!でもいいですし、義援金などどうでもいいが音源に対してのみ1億円の対価を払おう。とか、いろんな考え方ができると思います。そこはお任せします。

 ◎収録曲

1、Piano 1

ピープルのアルバム『Weather Report』のときに遊びで録音したピアノインプロヴィゼーション音源を元に、maxというソフトで組んだパッチをリアルタイムで操作しランダムにグリッチ変調を加え、同じくmaxで作ったシンセをランダムに走らせるという実験です。四谷のサウンドバレーというスタジオのヤマハのグランドピアノの音。ピアノ内部の弦や木製の部分をノックしたりもしてて、豊かな音色です。

2、20240123

正直、タイトルの数字の意味はぜんぜん思い出せません。2013年頃の作のはずです。maxのシンセと、キックのサンプリングでビートのようでビートじゃないようでビート、っていうのを作りたかったのだと思います。

3、electric_guitar

キーだけ決めてテンポも厳密に決めずにオケを即興で作っておいてその上で弾くという、曲名のとおりエレキギターソロのインスト曲です。テーマとして決めていたのは、「弾いたものが結果として旋律になるのはOK、頭で考えたり手癖で旋律を弾くのはNG」、という実際にやってみると結構難しい試みでした。ノイズが少しずつ旋律を為していく、というのをやってみたかったのです。

4、bird

スピードとフリケンシーを操作して極端なものを作れないかな、とおもって作った気がします。あまりにストイックすぎて、半ばヤケクソで鳥の鳴き声のサンプルを入れたらまあまあ面白くなりました。

5、Output 1-2

数人の人が木のブロックを叩いていて自然と生まれるようないい加減なズレを、実際の演奏じゃなくmax上でプログラミングしてできないかな、という実験をするために作った気がしますが、まあ失敗していますね。これまたmaxでリアルタイムで弾いたキーボードのピアノ音をグリッチ変調させていて、それがうまくハマっていて曲としての雰囲気は好きです。こうして振り返ってみると、max勉強の習作が多い気がします。maxというのは音と映像の自由度が高いプログラミングソフトです。

6、Spiegel Im Spiegel

これだけずば抜けて古い録音です。下手すると12~3年前かも。エストニアアルヴォ・ペルトという現代クラシック作曲家の曲をエレキギター2本でカバーしています。当時、黎明期だったドゥームにはまっていて、ドローンぽくカバーしたらかっこいいんじゃないかと閃いたのですが、事実、なかなかかっこいい。ペルトをファズで潰したエレキで、っていうコンセプトに自己陶酔しちゃっているのがグイグイ伝わってきますが、ラストのフィードバックからペダルをオフにするカチッていう音までなかなか味があって気に入っています。

7、acoustic_guitar

2014年頃の録音で、何の変哲も無い、アコースティックギターのフリーインプロヴィゼーションです。当時、楽器を演奏するっていうことは、いったい人の営みにおいてどういうことなんだろうかという根本的な疑問に向き合っていて、そんなおりにずっと好きだったデレクベイリーの評伝が日本で出版され読んで改めて感銘を受けたのを機に、彼がしているような本当に純粋な即興というものをやってみたいと思いました。自分の中での疑問への答えを行為によってなにか掴めたらな、という漠然とした思いからです。音楽も知らない、音程も知らない、奏法も知らない、というつまり、初めてギターを触る時に感じる驚きや喜びを再び引き出す、ということをやってみようと思い立ち、朝起きて、アコースティックギターのところへ行き、ただ録音ボタンを押して気持ちの純粋さが持続するまで、ただ弾き続けるというのを4日くらいやった中の一番良かったテイクです。ま、デレクベイリー、その一言に尽きます。

※形式はwavなので、全部で1Gくらいあります。

※是非欲しいけどソロのライブに来れず買えないという方は、少々お待ち下さい。いつか遠い将来ですが聴けるようにしたいとは思います。特に著作権も主張しないので、誰かにねだるというのも手段かと思います。ただ、正式音源としてのリリースではないので、そこまでして手に入れるべきものでもないのではないか、と作者としては思っております。

※ひとまず、4/26と5/8のみの発売とします。その後はまたその都度考えます。

※寄付の報告はこのタンブラーでひっそりと行います。