People In The Box『Kodomo Rengou』を作るとき、この音楽が10年後どう聴かれるか、という射程を念頭に置いていた。だからといってそれは作り手がコントロールできることでは毛頭ない。できることといえば、不純物を取り除いて、どのような場面においても機能する強度でいれるよう、根源で繋がっていようと苦心することでしかない。

 100年前の小説ヘルマン・ヘッセデミアン』に現在性を見出しながら読んでいる今、もっと射程圏を伸ばしたいと強く思う。

 思索と洞察がそのうちに軽やかな投影を始めるはずだ。いかにツルッとした表面でも、その内界が無数の何かでうごめいている、そういうものを作らなくては意味がない。

 初めてふれた素晴らしい音楽、小説、映画をもう一度体験するときに、2周目の冒頭に再びふれたとき特有の感動がある。それにおそわれるとき、その作品が自分の人生や人格に影響を及ぼしていくことを体感として知るような気がする。

(2018.03.12)