【Q&A:回答その1】

f:id:hatanohirofumi:20200401213053j:plain

 適度な感じで質問の方、頂いております。ありがたいことに音楽に関する話題が多いですが、それ以外も大歓迎です。引き続き、以下の要領でお待ちしております。

hatanohirofumi.hatenablog.com

ぼちぼちと答えていきたいと思います。どうなることやらわかりませんが、ひとまず試運転といきます。

 

 

こんにちは。 先日、ハーメルンの笛吹き男の伝承を改めて読み返したところ、 "笛吹き男は(トランス状態の)子供たちを山の沼に落としていったと思われる"というようなことが書いてありました。子供たちは嘘つきの大人のもとを離れてみんなで幸せに暮らしていると思っていたのでショックでした。 波多野さんはこのストーリーについてどういう気持ちをもっていますか?(伝承上のことでなく、波多野さんの中の物語について) また、物語にしあわせな結末を期待するのは間違っているのでしょうか?

(Kさん)

 

 幼少期、親に買ってもらったル・カインという画家の描いた『ハーメルンの笛吹き男』という絵本を読んで以来、この物語に取り憑かれています。People In The Boxの作品に『Lovely Taboos』という作品があります。ご存知かもしれませんが、「笛吹き男」「市民」「子供たち」というタイトルの3曲が収録されています。

 どこかで話したかどうか、いまでは記憶があやふやなのですが、この作品は当初、ハーメルンの笛吹き男の現代版というテーマで歌詞をつくろうと計画していました。この物語の示唆的かつキャッチーな構造を借りて、新しい笛吹き男の世界を展開できたら、という挑戦でした。ところが、登場人物の3つの視点をそのまま一曲づつに対応させて歌詞を書いていたのですが、伝承に忠実に作っていくなかで、歌詞の印象と音楽との間に乖離が生じ、すり合わせが困難になってきました。最終的には設定を一旦解除して思うままに筆を進めてできたのが『Lovely Taboos』で、曲タイトルがかろうじて名残を残しているというわけです。

 伝承でもいくつかあるとされる結末の内、Kさんのおっしゃる結末は、僕は知りませんでした。制作にあたってノート一冊分になるくらいは下調べしたので、単に忘れてしまっているだけかもしれませんが(笑)。トランス状態の子供たちを山の沼に落としていった。ショッキングではありますが、それはそれでなんとなくあり得るような気もしてきます。笛吹き男はただの善意の男ではありませんしね。

 僕の読んだ絵本の結末は、笛吹き男が子どもたちを山の向こうへと通じる洞窟へと連れていき、そこで幸せに暮らしたというものです。それに加えて、洞窟の扉が閉まった後で、ひとりの足のわるい子どもが洞窟の外にとり残されてしまうというエピソードもついていました。

 最初に読んだときは、蛇足のように思えていたのですが、年をとるにつれて、この足のわるい子どもが取り残されることの重大さというのに気づくようになりました。このエピソードが楔となって、この物語を単純な勧善懲悪や、ユートピア信仰へと傾倒することを防いでいると思います。ご存知の通り、ハーメルンの笛吹き男の伝承は様々な説があり、少年十字軍のことだという話、疫病による大量死の言い換えという話など、いろいろあるみたいですが、物語としてはル・カインの絵本が好みとして一番好きです。
 恥ずかしながら、昔はトリックスターの笛吹き男に憧れたのですが、いまではとりのこされた足のわるい子どもに断然シンパシーを覚えます。

 物語にしあわせな結末を期待するのは間違っているのでしょうか?というご質問ですが、エンターテイメントおいての結末は別として、純粋に物語というものにおいては結末は便宜上の断面のようなものだと僕は個人的に思います。結末にいたるまでと、あるかもしれないその先を区切る断面です。だからハッピーエンドもバッドエンドも、作者(いるとすれば)の性格というか、ざっくりいえば、皮肉に終わらせるか(ハッピーエンド)、誠実に終わらせるか(バッドエンド)の違いな気もします。個人的に良いハッピーエンドは嘘くささがにじみ出ているのが好きです。ひねくれすぎかもしれませんが(笑)。

 

 

こんにちは。悩み事があります。 今日付けの人事異動により前々から苦手だなと思っていた人が目の前の席になってしまいました。案の定、うまく連携がとれず、(経験不足という問題ではなく根本的な相性の悪さ)この一年間がとても憂鬱です。 社会人経験も浅いため、どうやって乗り切ってやろうかと考えています。 何かアドバイスがあれば、考え方の一つとして参考にさせていただきたいです。

(どーちょさん)

 

 なるほど、それは大変ですね・・・。正直、僕はどーちょさん以上に社会経験が浅く、人事異動で苦手な人と組まされるという経験が人生のなかでなかったので、アドバイスできる気がしません。

 一般的にいって、「相性がわるい」という場合、こちらの都合に引きつけて考えることはすべて困難だということだと思うので、相手の良いところを積極的に見つけていく、ということくらいしかないのでは・・・?もし良いところがひとつもなかったら・・・??もうどうしようもありませんね。

 以前、コンビニの深夜でバイトしていた頃、シンナーでラリったまま働く同僚がいて、絡んでくるのも超絶にだるかったので、全無視でほとんどの仕事をひとりでこなしていたのをふと思い出しました。

 半分冗談ですが、僕はほとんどの他人と相性が悪いと思いながら十代、二十代を生きてきました。それでもうまくやろうともがくなかで次第にわかってきたことは、自分とは違うというだけで相手には尊敬する余地がずいぶんあるということです。当たり前かもしれませんが、他人は自分の思いもつかないことを考えています。そのことを楽しめるかどうかが鍵なのではないかと、思ったりしました。

 普通すぎるでしょうか・・・・。大切なのは、それが絞り出したものであれ敬意は態度で伝わるし、そのなかでフィードバックが生まれると、なにかいいことが起きるのではないかと。がんばってくださいね。