【Q&A:回答その2】

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ほんとうにちょうどいい感じでご質問頂いております。
ご質問は以下の要領でよろしくお願いいたします。

hatanohirofumi.hatenablog.com

今日も少しずつお返事していきたいと思います。

 

これまで訪れた街のなかで、一番思い出に残っている街と、その理由はなんですか? (以下、雑記です) まだ穏やかだった2月にニューヨークに行きました。エンパイア・ステートビルの屋上から街を眺めた時に、People In The Boxの曲が自然と思いだされ、これまでぼんやり追っていた歌詞の意味が、点と点が繋がるように、直観的に理解できた気持ちになりました。 資本主義、グローバリズム、物質主義、個人主義(その集合体の社会)、のようなものの極致が、この街並みに詰まっていると感じたためでした。 「塔」だけでなく、特にAve Materia以降の曲のいくつかが、この景色(あるいはそれが象徴するもの)を歌っていると感じました。波多野さんと同じ景色を見られたかのではないかと、勝手に嬉しくなりました。 Peopleの曲からはいつも、物語を持つ街並みを連想します。波多野さんのお気に入りの街を知り、その街の要素が、どの曲のどんなところに潜んでいるだろう、とわくわく想像してみたいです。 この騒ぎが収まる頃、それぞれの街が持っていたイメージは変わっていると思うのです。それをしかと受け止めつつも、「いままで」の文脈で旅行ができたら、嬉しいです。

(MEさん)

 

 まさにPeople In The Boxの「塔」という曲は副題からも察せられるとおり、エンパイアステートの屋上からの景色が起点となって歌詞をつくっています。2012年の正月にニューヨークに行ったのですが、そのときに屋上からみた景色は今でも目に焼きついています。ここまで素直に体験から得たものが反映した歌詞は僕のなかでもかなり珍しいです。それほど強烈な印象だったのは間違いありません。おっしゃる通り、とにかくいろんな角度で象徴的ですよね。

 かつてSonic Youthというバンドのスタジオがあったムーレイストリートという通りに行ったときは興奮しました。いわゆる聖地巡礼ですね。嬉しくてなんだか変な感じになってしまい、なぜかむしろ足早に立ち去ったことをいまになって後悔しています。Sonic Youthにはその通りの名を冠した『Murray Street』という大好きなアルバムがあります。制作中に911が起こって、メンバーが走って逃げたというエピソードがあるのですが、歩いてみると確かにグラウンドゼロ跡地はかなり近かったです。

 これまで訪れた場所で思い出深かったのは、やはり直近の南インドでしょうか。郊外、都市部、スラム、保養地、色々行きました。とにかく街並みや風景もよかったのですが、人間のあり方が特に強烈でした。ひとことでは言い表せませんが、動物的な感度の高さと知性とデタラメさがごちゃまぜになった暮らしぶりをみていると、当然だけれど近代化にも色々あるんだなと妙な感慨が湧き上がってきました。あとは個、という考え方、死生観の違い、これを空気として感じたのは得難い体験でした。未だによく思い出して考えます。

 ご質問に「いままで」の文脈で旅行ができたら、とありますが、なかなか難しいかもしれません。すでに新しい文脈へと強制的に移行してしまっているような気もしますが、それはそれで楽しめる思考を模索していくことになるのかもしれませんね。

 

 

こんにちは、波多野さん。数年前(おそらく2017年の激歪)からエフェクターボードが2枚に増えていますが、ボードが増えるにあたって新しく導入した機材の詳細を教えていただきたいです。  

(もやしさん)

 

 確かにそのタイミングで足元のボード(ギターのペダルを格納する箱)を2枚にしたはずです。増えたのはLINE 6のM9とt.c.electronicsのフラッシュバック(もっぱらルーパー使用)が入っていますが、実はどちらもほとんど使っていません。どうしても特殊な設定が必要な曲がセットリストに入ったときのひと踏みくらいしか使っていないので、占める空間と働きが見合っていません。かといって外そうにも、突然システム上難しい曲がセットリストに入ってくることもあるので、なかなかお暇をだせません。

 現在はキーボードも一曲の中で弾き分けたりするので、新しい方のボードにはキーボードのダンパーペダルとギターの音を切るヴォリュームペダルが真ん中に堂々たる風格で鎮座しています。完全に演奏の利便性をあげるための増設で、基本的にギターの音に関わる機材は、10年近く変わっていません。

 ちなみに、メインの歪みはFulltone OCDだとよく勘違いされるのですが、実はアンプのFender Super Sonicの歪むチャンネルがメインです。しかも真空管(プリ管)を一本だけ違う種類のものに交換してあるので、現行品では同じ音は出ません。

 機材の話って、なんで楽しいんでしょうね。一種の現実逃避みたいなものかもしれません。