ワンマン公演『灯台』について
ワンマン公演『灯台』が終了した。今月16日までは公演の配信をアーカイブ視聴として購入してご覧いただけます。
こちらより→20201209hatano.peatix.com
今年1月に行った公演『身体の木 / 記憶の森』以来のワンマン公演。会場は同じく代官山晴れたら空に豆まいて。ブッカーの三浦さんと話し合って2ヶ月前に決めて1ヶ月前に発表するというスピード感だった。
公演は結果的にコンセプチュアルなものになった。そもそもコンセプトというもの自体、テーマとは違って結果的に現れてくるものだという考えなので、どんな場合でも少なからず一貫性がうまれるのは必然的でもあり、いつもとさほど変わらないつもりではあったのだけれど、ひとつ趣向として演奏をはじめるまえにおおまかな概要をあらかじめ話したこともあって、聴き手の意識の置きどころをいつもとは違うところに誘導できたような気がする。
内容は、「灯台」という曲を中心に、セットリスト全体をひとりの人物の内的な旅として表現するというもの。演奏の領域ではアコースティックギター、ピアノ、声だけというシンプルさに徹した。
いま、僕にとってひとりでの演奏とは、抽象的で漠然としている感覚を、自分の身体を通過させて何かを立ち上げようとする行為で、それが歌による言葉を伴うにつれ、少しずつ音楽が質量を持っていく気がする。その質量とはたぶん、演奏者本人である自分自身や聴き手にとっての意味のようなものだ。それは共有するようなものでは決してなく、各々が自分に引きつけて違う意味として受け取るなにかだ。一瞬立ち上がって、すぐに霧散していくその質量を、僕はいつも確かめている。
『灯台』
1. 雨の降る庭
2. 青空を許す
3. 継承されるありふれたトラの水浴び
4. ある会員
5. 猛獣大通り
6. 裏切りの人類史
7. 灯台(旧:ぼくが欲しいもの)
8. 旅行へ
9. ハリウッドサイン
10. 同じ夢をみる
11. 初心者のために
12. 2006年東京、上空
13. 楽園(旧:色彩と帝国)
14. 無題
15. 水のよう
2020年は晴れ豆に始まり、晴れ豆に終わる。1月の公演のときとはいろんなことが変わってしまった。場所は同じでも、空気が決定的に違っていて、別の現在がどこかで並行して走っているかのような錯覚を起こしてしまう。
いま生きるこの現在を、場所を、配信として公開することができたのがなにかとても嬉しい。尽力してくれた前述の三浦さんをはじめとする晴れ豆スタッフの皆さん、音響の角さんに大きな感謝を。演奏者として、配信のアーカイブで演奏を観てもらえたらそれに勝る喜びはありません。