クアトロマンスリー終了、音楽に◯◯を持ちこむな

 一昨日の演奏をもってPeople In The Boxの渋谷クラブクアトロの4ヶ月に及ぶマンスリーライブが終了した。

 3人のメンバーそれぞれが1日のライブをディレクションした3/4/5月、そしてリスナーの皆さんから聴きたい曲を募ったその上位20曲で構成した6月という4公演でなる今回のイベント、一ヶ月にたった1回のワンマンということで軽やかな気持ちで臨んだものの、始ってみると逆に一回のライブにかけるこだわりが暴走し、むしろまったく気が抜けない4ヶ月になった。  特にはじめの3公演はニューリリースもないというのに、初めてライブで演奏する曲や新しいアレンジ、カバー曲とかなり新しい要素を持ち込んだシリーズになった。  そして最終日は募ったリクエストによって構成する1日。正直いうと、深い意味があったわけでもなく、選曲する手間が省ける、くらいの不純な気持ちも個人的にはあったほどだった。いざこの日の演奏に向き合った時に、こういう場合は過去の曲になることばかりはわかっていたので、せっかくのワンマンで現在のバンドの曲を発信できないというストレスがあった。もちろん、完全に自分の蒔いた種だが。  今年に入って音楽家の訃報が続いた。そのときに感じたことは音楽は故人の意思とは関係なくリスナーのなかで生き続けるということだった。集計結果を眺めながら、生きている俺はまだ自分で演奏できるんだと思ったときに気持ちが180度変わった。今の自分で古い曲を更新していけばいい。スタンダード曲として耐えうるか、曲を全力で弾いて試していけばいいだけだ。  リクエストライブという響きから想像する「ファン感謝デー」的な気持ちは一切なし。VS過去の自分という戦いの気持ちで挑んだ。

 ニコニコ生放送タイムシフトで自分の前日の演奏を聴いた。演奏という意味ではしっかりと今のバンドが反映されていたし、客観的によくスリーピースでここまでするな、と率直に思った。 笑  この徹底的に楽をしないスタイルは自分ではまったく好きではないけれど、そうしてやってきた意地みたいなものが結実してて面白かった。意味のあるものになって、こちらから募ったとはいっても、投票してくれた皆さんには心から感謝したい。どうもありがとうございます。

 とはいっても意図しない結果に甘えるつもりもないので、これからも思いっきり楽しんでやっていきます。8月のアコースティックツアーもお楽しみに。

 季節が深まってくると公共機関のエアコンが猛威を奮いだす。極端な温度設定。誰が喜ぶのかと毎夏毎冬、憤っている。おそらく、一部の我慢がちっともできない少数の人間の苦情が受け入れられた結果だろうと思う。世の中はそんな風にできている。やかましい最低ラインに基準を合わせる。  弁当に炊きたての米を入れるタイプのコンビニで、普通盛りを頼んでも常軌を逸した量の大盛りといえるほどのご飯が入っていることがある。これはご飯が少ないというクレームを極端に忌避している結果なのだろうと思う。食べきれない米は捨てればいい、クレームが来るよりマシということだ。少数のクレーマーに基準を合わせるという消費社会の最低な成り立ち。

 「音楽に政治を持ち込むな」といっている人がいるとされているらしい。でもそんな人は僕の感覚としては、いない。万が一いてもごく少数で、その人はBob MarleyRage Against The Machineもブルーズも聴かないし、そもそもフジロックに行かないだろう。音楽に歴史があるということや多様性について議論をできるような耐性もない、そんな人を意見の数に入れてはだめだ。無視。音楽はコンビニじゃないんだから。意識最低ラインの人の意見を相手にすることほど、徒労に終わることはない。というか、そもそもそんな人いない。というのが僕の感覚です。だってネットに人間なんていないんだから。今書いているこの文章だって誰が書いたか、僕以外知らないんだから。

 議論はもっと身近な人としたい。  逆に「音楽に生活を持ちこむな」「音楽に空気の振動をもちこむな」とかいう人とはちょっと話してみたいけど。いや、やっぱり遠慮しておこうかな。

(20160619)