うさぎへの生成変化

 ぼくはうさぎを大変魅力的な動物だと思っている。そのことを友人に話したところ、犬との違いを訊ねられた。そのときは匂いが少ないとか発声しないとか、具体的な言及にとどめたが、それ以上の決定的に違う要素がなにかあるような気がしている。

 うさぎは犬や猫と比較すると、圧倒的に何を考えているかわからない。警戒心はあるが心を許していないというわけではない、興味はあるが積極的に関わりたいわけではない、という複雑な気持ちのありように自ら引き裂かれたように謎の動きをしたり、じっとしていたりする。あるいはそれもこちらの深読みにすぎないのかもしれないが、いずれにせよ、よくわからない。

 そうすると、犬や猫の感情表現のなかに人間に似たものを見出し、そこに同一化することで愛着を持つというメカニズムは自然と発動しにくく、人間の立場からの安易な同一化を拒否し、うさぎ性の保持によってのみ飼い主を魅了しているということになる。

 共感によって成立する関係と、そうではなくただ互いに異物として在るという関係。どちらもそれぞれに良いものではあると思うが、ぼくがうさぎの「同一化を拒否する」というありかたに「共感」してしまってもいるという、この入り組んだ事実が重要な気がする。同一化なき共感、その距離感こそが魅力であるとも言い換えていいのかもしれない。

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