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「Deeper Understanding」と「My Computer」

Kate Bushが89年に発表した『Sensual World』に収録されている「Deeper Understanding」は、コンピューターを擬人化して向き合い、自分への深い理解を求めるという滑稽だが切実でもある姿を淡々と描く美しい曲だ。 Kate Bush - Deeper Understanding (FULL A…

うさぎへの生成変化

ぼくはうさぎを大変魅力的な動物だと思っている。そのことを友人に話したところ、犬との違いを訊ねられた。そのときは匂いが少ないとか発声しないとか、具体的な言及にとどめたが、それ以上の決定的に違う要素がなにかあるような気がしている。 うさぎは犬や…

蔵出し未発表曲

先日公開した『The Cheat』と同じ頃、2000年頃、19歳くらいに録った2曲。 「Taking A Picture Of Invisible Thing」はリズムマシンとエフェクトペダルのみを駆使して録音した曲。「When The Ghosts Visit My Room From The Window」はギターとリズムマシン…

上田岳弘『ニムロッド』

第160回芥川賞受賞 ニムロッド 作者: 上田岳弘 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/01/26 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 作者の上田さんはタイトル『ニムロッド』をPeople In The Boxの曲名から取ったという。それを受賞会見で聞いて驚き…

波多野裕文 - The Cheat(2000)

波多野裕文 - The Cheat (Audio Only) 昔に録音したもののなかには、手元にあるものとないものがある。僕が10代後半の頃はまだパソコンが高価だったから、4Trackのテープレコーダーから専用のデッキでCD-Rに録音し、人に聴かせるでもなくただひたすら保存す…

本能と制度

チェンナイ、マイラポールという地区の道路の交差点には信号がない。というか、僕が歩きまわった限りでは、都市エリア以外のインドでは信号に遭遇するほうが珍しい。日本に信号が多すぎるのもあるとは思うけれど、片側2車線ずつ計4車線(塗料が剥がれていて…

躁的/鬱的

資本主義が宿命的にもたらす富の格差は、これから人を躁的なありようと鬱的なありようの二分化をさらに加速的に広げていくのだろうと思う。それは実のところ対称的なようで対称的ではない。というのも、躁的な振る舞いは野心や攻撃として可視化されることは…

無関心という緩衝地帯

「愛の反対は憎しみではなく無関心」という言葉を、誰がどういった意味で、どういった文脈で言ったのか、僕はよく知らない。ただ、その言葉を借用し、他人への促しとして流用するとき、情報過多の現代ではそれは的を失った言葉のように聞こえる。 どこかから…

はて、本質

本を読んでいて、「ヴェールを剥がさないまま本質に触れる」って素敵な表現だと思った。 ふと。この時勢において、本質とはなにを意味するんだろうか。戦争やら死刑やら、特例によって殺人が許されている世界でどんな本質と向き合えるというのか。 ぼくはど…

青木裕

青木裕という人は、創作において、すべての近道を退ける、ずるいことを決してしないひとだった。ぼくはこれまで、あれほど誠実で自分に厳しいひとをみたことがない。ぼくにはそれが少し怖くさえあった。絶対に彼の真似はできない。理想の実現や葛藤と真正面…

People In The Box『Kodomo Rengou』を作るとき、この音楽が10年後どう聴かれるか、という射程を念頭に置いていた。だからといってそれは作り手がコントロールできることでは毛頭ない。できることといえば、不純物を取り除いて、どのような場面においても機…

Brad Mehldau『After Bach』

Brad Mehldau『After Bach』 元からこのピアニストの左手は、音楽のなかで右手の活躍に甘んじたりしない、構造を形づくるなかで最大限の動きを果たしている印象があった。率直に対位法を感じさせる演奏だったから、バッハをテーマにするというのは、取ってお…

たよりない能動性

僕のような80年代生まれの人くらいまでだと、音楽をたくさん聴いたことがある人がえらい、みたいな風潮は、かつては確かにあったように思う。たくさん聴くにはまず本や、当時まだ黎明期でデータベースとして貧弱なインターネットで知識を蓄えねばならない。…

認知

ある対象を、そうと知らず平面視してしまっていないかどうかは、絶えず見る角度を変えたり、実際に触れてみないとわからない。それができないときは、そういうものだと思う。平面とわかって受け取ってしまえばいいし、奥行きを想像する余地を楽しめばいい。 …

連帯しない連帯

強迫的に孤独を忌み嫌う言説の行き着く先というのは、ただただ身の毛のよだつような惨状である。ここ10年での急速に加速する孤独を忌避する社会の傾向というのは、小さな連帯を増やして短絡的な安心を生み出し、境目のない交流をかえって分断し、ないものの…

どんな言葉であれ、額面どおり信用するというのは、とても危険なことであることは間違いない。語義は発生源の数だけ存在するわけであるし、正確さを求めてひとつひとつ精査して読みとっていくというのは人の為せる業ではない。その途方のなさにはどうしても…

いつか何かをわかるときがくるのかどうか、たぶんこない気もするけれど、そこにとどまるという選択肢を、細胞がやんわりと拒否しているのである。 いつも柔らかな拒否であるので、神経が反射を起こす気配もまだなく、おびただしい事象が言語化されないままに…

7/15/2017 上海

大柴広己くんに誘ってもらって、上海へ。 ソロでは初めての海外公演。 そして初めての中国。 14日、ライブ前日、僕だけ関空からだったので別便で単独上海へ。 着陸前、これまで幾度となく乗ってきた飛行機の中でもかなり上位に食い込むほどの揺れを感じたが…

2016年

今年はとにかく充実した一年だった。People In The Boxとしては初めて一枚も作品リリースをせず、ライブの数も激減させた。これは今までの慌ただしかった活動をペースダウンさせようとした結果などでは、決してない。 単純に音楽的な理由のない公演は行わな…

9月

9月は自分のわりと周辺にある音楽に触れて感じることが多かった。 8月末日に初めてGEZANのライブを観た。すごくよかったけど、何がどういいのかよくわからなくて、ずっと尾を引いている。音は大きかったけど、音楽は静かな感じがした。マヒトゥ・ザ・ピー…

クアトロマンスリー終了、音楽に◯◯を持ちこむな

一昨日の演奏をもってPeople In The Boxの渋谷クラブクアトロの4ヶ月に及ぶマンスリーライブが終了した。 3人のメンバーそれぞれが1日のライブをディレクションした3/4/5月、そしてリスナーの皆さんから聴きたい曲を募ったその上位20曲で構成した6月という…

神保町弾き語り、ニュースとは

今月の初めごろに森岡賢さんが亡くなった。同じ訃報でもDavid BowieやPrinceとは意味が違った。13歳の頃に出会ったソフトバレエは閉塞感で腐りそうだった当時の僕の精神をギリギリのところで救ってくれた。『INCUBATE』『Million Mirrors』『Form』の3枚のCD…

ソロアルバムを発売します。

先日お伝えしたように、西が中心になってしまうのですが、久しぶりのツアーをやります。 日付変わって今日5/15がチケットの一般発売日、予約開始日です。 各会場、時間や方法が違うので、それぞれ確認の上、よろしくお願いします。 先日8日の弾き語りでもサ…

13日のクアトロワンマン公演について

昨日5/13金曜日、渋谷クアトロマンスリー企画お越し下さりありがとうございました。 月一のクアトロ公演をメンバーがそれぞれ1日ずつデレクションする企画の自分の担当回ということで、ここはひとつ過激なことをぶちかましてみようかと色々と考えました。全…

5/8『Selected Abstract Works I』をお買い上げの皆様へ

昨日の蔵前nui.での公演でダウンロードリリースした『Selected Abstract Works I』、お買い上げありがとうございます。 ちょっとフォントの関係でわかりづらかったと思うのですが、今回のダウンロードのURLの「I」はアルファベット大文字のアイです。公演日…

4/26『Selected Abstract Works I』をお買い上げの皆様へ

一昨日の4/26代官山晴れたら空に豆まいてでの公演でダウンロードリリースした『Selected Abstract Works I』、お買い上げありがとうございます。 作品の詳しい内容/性質に関してはこちらの記事を御覧ください。 売上は総額125,413円になりました。義援金の送…

『流氷と工場』そして突発的リリース

明日というか日をまたいで今日は遂に成山さんとのツーマンイベント『流氷と工場』の日です。代官山の晴れたら空に豆まいて、ありがたいことにソールドアウトしました。 素晴らしいソロアルバムを完成させた成山さんと、これから作ろうとしている僕の二者の演…

ポータブルオーディオプレイヤー

少し前にかなり長い間使っていたiPod classicが壊れてから、外に出歩くときは仕方なくiphoneに音楽をぶち込んで聴いていたのだけれど、さすがにいろいろ辛くなって、聴く専用にポータブルプレイヤーを新しく購入した。中国製のFiiO X1。ちなみにiTunesが使い…

作曲家としてのジェフ・バックリー

ジェフ・バックリーは自作曲を多くは残さなかった。レナード・コーエンの「Hallelujah」を初めとして、彼を有名にした曲の多くはカバー曲やジャズやブルーズのスタンダードである。 単純にレパートリー量が膨大であるとともに、カバーした曲は多岐にわたる。…

新年のごあいさつ

年をとるにつれて変わっていくタイプの人間と、ほとんど変わらないタイプの人間がいるとすれば、僕は確実に前者だと自覚している。確固たる自分というものがこれまでの人生であった試しがない。そういった核のようなものが欲しいかどうかというと、欲しい気…