合同ツアー『TOMOE』について

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 この写真をみて欲しい。ほぼ同年代の男たちが横一列に並び、定まっていない視線でこちらを見ている。まるで偶然に集められたかのように、誰一人として確固たる意志を持たぬまま撮影に臨んでいる。僕はこの写真がとても好きだ。

 『TOMOE』というイベントの歴史を正確に述べるのは難しい。tacicaTHE NOVEMBERSPeople In The Boxの3バンドの合同ツアーは『TOMOE』としては今回の開催が2度目だが、それ以前にもプレ『TOMOE』とも呼べる共演をかなりの回数重ねている。2008年にtacicaのツアーにTHE NOVEMBERSPeople In The Boxが帯同したのが最初の共演だった。

 かつて、10年ほど前、もし音楽シーンと呼べるものがあったとしたならば、我々は非常に近いところにいた。それなりの規模のイベントなどでは顔を合わすことも多く、おそらくリスナー層もずいぶん重なっていたのではないかと思う。僕はそう認識している。当時この3バンドがツアーをすることは別段不思議なことではなかった。意外な組み合わせでもなんでもなく、我々自身も敢えてというよりは、ある種の必然のなかで生まれた共演だと感じていたと思う。

 2011年以降、時代の変化が加速し、また互いのバンドの活動がそれぞれの方法で成長し変化していくなかで、「『TOMOE』をいつかまた」という気持ちはありながらも、その必然性は遠のいていった。その内の2バンドの共演は時折あったとしても、『TOMOE』実現までは至らなかった。ピープルに関していえば、一時期はワンマンしかやっていなかったくらい、半分は意図的に、もう半分は結果的にほとんど鎖国状態にあった(近頃はほどほどに開国中)。いずれ来るべき『TOMOE』への僕個人の思いとしては、例えるならば強いカードを残してはいるけれど、その使いどころが一向に巡ってこない、そんな気分でいた。

 ところが、そもそもそういったカードを切るようなゲームというのはどこにも存在していないことに、あるとき突然思い当たった。そこにはなにか打算のようなものがあったように思う。うまくいえないけれど、かつて必然としてそこにあったような連帯を再び演出したかったのかもしれない。しかし、この3バンドはもう、互いへの以前のような連帯を必要とすることはないだろう。その決定的な事実に気付いたとき、『TOMOE』への可能性が、むしろ強く開かれたように僕は感じた。

 7年半という歳月は決して短くはない。バンドがそれぞれの道を歩むなかで、すでに『TOMOE』のことを知らない人のほうが多いはずで、リスナー層も最早ほとんど重なっていないはずだ。むしろ意外に思う人のほうが多くても不思議ではない。だとすると、今度は時代の必然としてではなく、強い要請のない、あくまで偶然として改めて出会いなおす、そんな反転したロジックを用いて、いまこの時代に『TOMOE』は再生しようとしている。これが僕の考える今回の『TOMOE』だ。

 いま一度、冒頭の写真を見てほしい。どれも、これは偶然に出会ったというような顔をしている。少なくとも7年前、誰もがこんな顔で写真に写るような人ではなかったとおもう。我々は偶然出会った音楽家として、まったくそれぞれのやり方で鮮烈に音楽を演奏するだろう。ただ、それだけだ。僕は楽しみでしかたがない。

 

 

TOMOE 2019

tacicaTHE NOVEMBERSPeople In The Box

5/25(土) 仙台 CLUB JUNK BOX

5/31(金) 福岡 BEAT STATION

6/2(日) 梅田 CLUB QUATTRO

6/9(日) 名古屋 BOTTOM LINE

6/14(金) 東京 マイナビBLITZ赤坂